20日2021年5月
コロナの医療と通常の医療
コロナ禍では感染者の直接的な健康被害は甚大ですが、
非感染者であっても間接的な健康被害はこれまた深刻で、
その実態はむしろこれから明らかになってくると思われます。
例えば巣ごもりによる運動不足によって全世代で肥満が増え、
それが将来的な高血圧や高脂血症などの慢性疾患に繋がったり、
高齢者がデイサービスやデイケアへ参加できないことで、
認知症の増加やロコモ
(運動器症候群:運動器の障害により要介護になりやすい状態)
に繋がることが挙げられると思います。
日本肺癌学会が2020年の肺がんの新規患者数を調査した結果、
前年より6.6%減少したと発表しました。
コロナ禍による受診控えや検診控えが影響しているとみられ、
全国で8600人の診断が遅れ、治療の機会を逃したと推定されています。
このことは早くも明らかとなった、とても深刻な健康被害の例と思います。
がんの診断の遅れ、特にその中でも進行が速い肺がんで発見が遅れれば、
治せたはずのがんが治せなくなってしまうことや、
すでに広く全身へ転移してしまっていた、ということになってしまいます。
このような診断の遅れが大腸がんや胃がん、
乳がんなど他のがんでも同時に起こっているとすれば、
最終的には助かるはずの多くの命が失われるのではないかとぞっとします。
なぜコロナの病床が増えないのか、とテレビでよく議論されています。
コロナの医療を優先するのか、通常の医療を続けるのか、
この選択は簡単ではありませんし、正解はありません。
先に述べた慢性疾患や認知症、ロコモの増加やがん診断の遅れといった、
コロナによる間接的な健康被害がこれ以上悪化しないように、
コロナの医療と通常の医療を上手く両立する努力が求められます。
テレビではそのような議論はほとんどされていないように思います。
通常の医療を何とか守らなければならない、
という考え方への理解がもう少し広がればなあ、と感じています。