聴力障害
・耳鳴り
〔 音が聞こえない 〕
聴力障害・
耳鳴りについて
聴力障害の原因はさまざまですが、脳に原因がある場合もあります。
その場合に疑われるのは脳腫瘍などで、この場合は腫瘍ができた場所によって聴力障害が起きる耳が変わるためどちらか片方の耳が聞こえにくくなるという特徴があります。
いわゆる「耳が遠くなる」という加齢性の聴力障害であれば両耳に影響が出るため、それが片方に限られている場合は脳の検査によって早期に原因を特定する必要があります。
難聴や耳鳴りといった症状は他の病気でも現れますが、腫瘍による神経圧迫が原因の聴覚異常は、他の症状も同時に現れるケースもあります。
聴神経腫瘍の場合は、主に顔面の痺れや筋肉麻痺、嚥下障害といった症状が現れることが多く、これらの症状が出る場合は腫瘍が相当大きくなっている可能性があります。
聴神経腫瘍とは
腫瘍が小さい初期の段階から難聴が始まります。
片方の難聴は症状として自覚しにくい傾向にあり、健康診断で聴力検査をしてはじめて気付く場合も少なくありません。
症状としては耳鳴り、腫瘍が大きくなってきた場合はめまいやふらつき、更に腫瘍が大きくなってくると小脳を圧迫するだけではなく腫瘍の影響で、ふらつき、平衡感覚喪失、頭痛などが症状として現れます。
また顔面神経を圧迫してくると、顔面麻痺が起きる事もあります。
聴神経腫瘍の検査
初期症状は難聴、耳鳴りなどの耳から来る症状が多く、聴力検査から難聴の指摘があり、MRI検査で発見されケースが多いです。
診断には造影MRI検査での診断が最も重要になります。
当院のMRIでは、腫瘍サイズが1cm未満の腫瘍も発見できるようになっています。
CT検査でも腫瘍の存在を指摘できますが、周囲の神経との関係、腫瘍の性状など詳細な情報を得るにはMRIの検査が必要になります。
耳に原因のある耳鳴り
メニエール病 | |
特徴 | 蝸牛、三半規管、前庭の中を満たす内リンパ液に不具合を生じることが原因と考えられています。蝸牛、三半規管、前庭に不具合を生じますので、めまい(三半規管・前庭の症状)以外に難聴や耳鳴り(蝸牛の症状)を伴います。 |
診断方法 | 診察:めまい、難聴、耳鳴りの確認。眼振チェック 頭部MRI検査:異常所見なし(脳梗塞や脳血管に異常がないことを確認する) |
治療方法 | 抗めまい薬やステロイドが効果がありますが、全例、耳鼻咽喉科へ紹介します。 |
突発性難聴 | |
特徴 | 内耳(蝸牛、三半規管、前庭)の血流障害が原因と考えられており、ある日の突然発症する片側の難聴が特徴でめまいはさほど強くありません。 |
診断方法 | 診察:上記の特徴を聴取 頭部MRI検査:異常所見なし(脳梗塞や脳血管に異常がないことを確認する) |
治療方法 | 突発性難聴は早急のステロイド治療が重要で治療が遅れると、後遺症となりますので全例、耳鼻咽喉科へ紹介します。 |
騒音性難聴 | |
特徴 | 難聴に加えて、多くの場合、耳鳴りを伴います。大きな音を聞くと音が割れてやかましく聴こえ、言葉の弁別(識別)も悪いという感音性難聴の特徴を持ちます。難聴は高音部に強く表れ、初期には4000ヘルツが聞こえにくくなるC5 dipという難聴を示します。 |
診断方法 | 診察:上記の特徴を聴取 頭部MRI検査:異常所見なし(脳梗塞や脳血管に異常がないことを確認する) |
治療方法 | 急性に起こった音響外傷では、ステロイドが有効です。長期間の音響暴露で生じた騒音性難聴では、ダメージを受けた有毛細胞を元に戻すことは、現在の医療ではできません。全例、耳鼻咽喉科へ紹介します。 |
耳垢栓塞 | |
特徴 | 大量の耳垢が耳の奥に溜まって塊となり耳栓のようになり、耳の穴を詰まらせたり、狭くしたりする病気です。耳の閉塞感、耳鳴りを起こすことがあります。急に難聴になったと訴える方が、実は耳垢が溜まって聴こえにくくなっていたということもあります。 |
診断方法 | 耳鏡や顕微鏡を使って耳の中を観察します。通常は鼓膜が見えますが、耳あかによって鼓膜が見えないと、「耳垢栓塞」となります。 |
治療方法 | 塊になって詰まってしまった耳垢は、ご自身による耳掃除で取り除くのは、困難です。耳鼻咽喉科を受診して、安全にしっかりと耳垢を取り除きましょう。 |
耳管狭窄 | |
特徴 | 耳管狭窄症は、耳管がつまることにより、耳がつまった感じ(電車に乗ってトンネルに入った時の感じ、高い山に登った時の感じ)、自分の声がひびいて聴こえる、自分の呼吸の音が耳にひびくといった症状が起こります。 |
診断方法 | ティンパノグラムという検査(耳の外側から鼓膜に圧力をかける検査)で、耳管狭窄症の診断が可能です。大人の耳管狭窄症においては、稀に鼻の奥に腫瘍ができている可能性があるので、内視鏡検査を行ったほうがよいでしょう。 |
治療方法 | ルゴールという薬剤を耳管内に塗布する方法やメローセルと呼ばれる低刺激の繊維の塊を、耳管内に挿入して耳管を閉塞させる手術を行います。全例、耳鼻咽喉科へ紹介します。 |
耳硬化症 | |
特徴 | 通常は思春期以降に発症し、徐々に進行する難聴や耳鳴りを特徴としますが、稀にめまいを伴う患者さんもおられます。耳硬化症の発症初期は、軽度~中程度難聴から始まりますが、長期にわたって放置すると高度難聴になってしまう場合もあります。 |
診断方法 | 外耳道や鼓膜の所見は正常ですので、通常の診察のみでは診断がつきません。聴力検査、耳小骨筋反射の検査、CTを撮影して診断しますが、最終的に手術によって診断される場合もあります。 |
治療方法 | 補聴器を使うかアブミ骨手術という方法で行います。全例、耳鼻咽喉科へ紹介します。 |
脳に原因のある耳鳴り
脳腫瘍(聴神経腫瘍) | |
特徴 | 聴神経腫瘍とは、前庭神経というバランスの神経に発生した脳腫瘍(良性腫瘍)のことです。多くは聴力の異常(聴力低下、耳鳴り)で発症しますが、腫瘍の増大に伴い脳幹を圧迫するとめまいを生じます。また、非常に腫瘍が大きくなると同側の顔の痺れを伴うことがあります。 |
診断方法 | 問診:聴力障害が先行しためまい。及び同側の顔の痺れ。 頭部MRI検査:内耳道という神経の通り道に聴神経腫瘍を認めることができます。 |
治療方法 | 良性腫瘍なので基本は経過観察です。しかし腫瘍の大きさが3cmを超える場合は治療(まずは放射線治療)を考慮します。4cmを超える場合は脳幹への強い圧迫を伴いますので手術加療(開頭腫瘍摘出術)を考慮しないといけませんが、難易度が非常に高い手術となりますので、信頼がおける聴神経腫瘍のエキスパートに執刀してもらうことが重要です。 |
老人性難聴 | |
特徴 | 老人性難聴では、高音域から聞こえが悪くなり、しだいに普段会話をしている音域、低い音域まで聞き取りにくい範囲が広がっていきます。さらに、難聴は徐々に進行していき、片側だけが悪くなることはなく、両側の聴力が同時に低下していきます。さらに、言葉の聞き取り能力の低下により、音自体は聞き取ることができても、何を話しているのか分からないという状況が起こります。これは内耳のレベルで聞こえていても、これより先の音が伝わる経路や脳のレベルでの言葉の判断能力(語音弁別能)が低下していることが原因です。また、老人性難聴の多くの方はキーン、ジーといった耳鳴り症状を伴います。患者さんの耳鳴りの程度によっては不安感、不眠などの症状を伴うこともあります。 |
診断方法 | 純音聴力検査を実施します。125Hzの低い音から8000Hzの高い音まで7つの周波数の音がどの程度聞き取れるかをみるものです。また、言葉の聞き取りがどの程度障害されているか調べる「語音聴力検査」を行う場合もあります。 |
治療方法 | 残念ながら、若返りの特効薬は無いように、老人性難聴の治療法はありません。両耳が40dB以上の難聴のレベルになってしまえば、補聴器の装用を考慮しなければなりません。 |